くそぉ………瞼が重い。
夕べ、調子に乗って飲み過ぎたか。
せっかくのクリスマスだってのに、二日酔いなんて冗談じゃねぇ。
手繰り寄せた携帯電話を見ればメールが四件。
その内二件は可憐で、今夜表参道で行われるパーティについての話だった。
もう一件は魅録。
毎年恒例、正月のツーリングへの誘いだ。
そして最後のメールは────
「やべ。……………うーーん、電話にすっか。」
礼儀にうるさい清四郎の番号を、震える指でタップする。
まだ酒がどっぷり残ってるとみた。
「──────はい。」
「ごめ~ん、清四郎。今、起きた。」
「随分とゆっくりですね。」
曇った声が届く。
「ゆ、夕べ、父ちゃんの友達来ててさ。遅くまで散々飲まされたんだよ!だから今朝は、目眩するほど二日酔いなんだ。」
「なるほど。…………となると、デートは難しいか。」
「いや、あーーーー、うーーーん…………」
「無理せず、薬を飲んでゆっくり寝てなさい。あまりひどいと、夜のパーティすら参加できなくなりますよ。」
突き放すわけじゃなく、どこか心配そうな声に切り替わる。
───あーあ、デート楽しみにしてたのにな。
出来立ての水族館、クリスマス限定でシャチとイルカのコラボショーをやるって聞いた。
ま、それもこれも飲み過ぎたあたいが悪いんだけどさ。
「清四郎は今から……何すんの?」
「そうですね…………図書館にでも行こうかと。」
「独りで?」
「そりゃ…………まあ。」
忙しいあいつとのデートは、いつも週末だけ。
それも今日はクリスマス。こんな風におじゃんにしちゃうのはもったいなさ過ぎる。
「…………うちに来たら?」
「え?」
「だって、あたいの為に時間空けてくれてたろ?」
上手く言えないけど、清四郎との時間が欲しかった。
頭はガンガン。
胸焼けだってする。
でもあいつが側に居てくれたらそれだけで…………少しは気分が良くなりそうなんだ。
「やれやれ。素直に会いたいと言えばいいのに。」
「そ、そういうの苦手なんだってば!」
「分かってますよ。…………今から準備して向かうので、30分くらいかかります。」
「ん……………待ってる。」
「じゃ、後で。」
電話を切ると、さっきまでの最悪な気分は幾分かマシになった。
これも清四郎効果?
後は薬を飲んで、あの大きな手でよしよしされたら、すっかり回復しそう。
くふふ────
あたいは頭からスポッと布団に潜り込み、30分という短いようで長い時間をニマニマしながら待ち続けた。
一秒でも早く会いたい────
─────大好きなあいつに