おかえり
「清四郎遅いなぁ」
今日は清四郎が出張から帰ってくる。
本当なら一週間の予定だったんだけど、ちょっとトラブルがあって二週間に伸びた海外出張から。
「もう日本に着いているよなぁ。予定なら家に帰ってる時間なのに何かあったのかなぁ、、、」
メール送っても返ってこない。
充電し忘れたらしく電池がギリギリだってフライト前のメールに書いていた。
あいつにしたら珍しい。
「剣菱に寄ってるのかな?」
直帰するって言ってたけど、父ちゃんに呼び出されたか?
だったら父ちゃんの方から連絡があるはずだ。
違うよな。
あたいは時計を見ながら溜息をつく。
やっぱり空港に迎えに行けば良かったかな?
いや、駄目だ。
清四郎に禁止されている。
大人しく家にいないと怒られちゃう。
もう少し待って帰って来なかったら父ちゃんに電話しよ。
そう思っていたら、
「あ!帰ってきた!!」
ドアチャイムは鳴ってない。
足音だって聞こえない。
けどなんとなく分かるんだ。
清四郎が帰ってきたってさ。
あたいはすぐさま玄関へと向かった。
ガチャリと音を立て、玄関ドアが開いた。
片手でドアを止め、スーツケースを持った清四郎の姿が目に入った。
「清四郎!おかえりっ!!」
「ただいま、悠理」
あたいは清四郎に飛びつくように唇を寄せる。
清四郎もまたそれに応えるように姿勢を低くした。
久しぶりの清四郎。
お帰りのキスはいつもより長め。
「、、、お前の野生の勘は本当に凄いな。帰ってくる時が分かるとは。サプライズが出来ませんよ」
だって分かるんだもん。
帰ってきたって。
「お疲れ様、清四郎、遅かったから、ちょっと心配した」
「道が混んでいましてね」
「そっか」
スーツケースは玄関に置いたまま、とりあえずリビングへ。
「留守中どうでしたか?」
「みんな来てくれた。
可憐とか野梨子はかわるがわる泊まってってくれた。
だから大丈夫」
そう、みんな来てくれた。
魅録も美童も遊びに来てくれた。
けど、、、
清四郎がいると全然違う。
寂しくはなかった。
みんな来てくれたから寂しくはなかったんだぞ、、、、、多分。
だけどなんだか物足りなくて。
いくらお腹に、、、いてもさ。
清四郎がいるだけで何故だか何かが満たされる。
恥ずかしいから言わないけど。
そんな天の邪鬼なあたい。
でも清四郎はお見通しなんだろう。
ギュッとあたいを抱きしめた。
「僕は寂しかったですよ」
優しく抱きしめるその腕は温かく心地いい。
「、、、おかえり、清四郎」
応えるように、会えなかった二週間を埋めるように、あたいもギュッと抱き返した。
ぽっかりとあいていた隙間が満ち足りていく。
、、、、、やっぱりあたい寂しかったみたい。